どうもみなさんこんにちは、トロオドンです。
今年もアドベントカレンダーというかゴロツキ作文集が行われると聞きまして私がトップバッターを務めてやるぞという気持ちだけは高らかに宣言し12/1の記事は自分にしてやろうと必死にネタだけは考えていました。にもかかわらず私は数週間そのネタを寝かせた挙句一文字も書かず、11/29の深夜無理やりに作業配信を開いて作業を進めなければいけない状況を作り出し、それで無理やりにこの記事を書かねばいけない状況を作って書いています。しかもこの記事を書くにあたり1時間45分をこの記事の方針を決めることに費やし、挙句の果てにリスナーには「まだ書いてないの!?」と言われるほどに追い込まれた状況を作ってしまっています。それでも私は、それでも、きちんと考察した記事を書かねばならないと、ガンダムオタクとしてその考察記事にはきちんと時間を手間をかけねばならないという覚悟だけは一人前に、時間をたっぷり使って記事の方針を決めたのです。
そう、グフカスタムとはいったい何だったのか
今回はグフカスタムっていったい何だったんだろうかという話をしていきたいと思います。アドベントカレンダーのトップバッターとしてこれを書かねばならないと私は決意したのです。これだけは書かねばならない。なぜならば、この世界にはグフ・カスタムが何だったのかについて考察した記事が存在しないからです。我々はグフ・カスタムについて調べる時、「グフ・カスタム かっこいい」「グフ・カスタム 強い」などという我々が既に知っていてもはや全く必要ない情報ばかりが出てきます。我々に必要なのは「グフ・カスタムとは何だったのか」それだけなのです。
そう、皆さんの疑問はわかります、「グフ・カスタムって何?」という皆さんの声は聞こえます。その通りです、皆さんはグフ・カスタムを知らないでしょう。ですからグフ・カスタムとは何なのかについて解説するようなことは私はしません。グフ・カスタムは、ガンダムオタクなら絶対に知っているワードであり、そしてガンダムを知らない者は絶対に知らないワードだからです。知らない人に向けてグフ・カスタムの解説をしていたらそれだけで記事が一本仕上がってしまうのです。我々はそんなことについて話している余裕はないのです。一刻も早くグフ・カスタムとは何だったのかについて議論しなければならないのです。
私は以前ガンダムのモビルスーツに関する考察記事を書いていた時期がありました。現在は毎日配信と仕事に追われる毎日でどうしてもこのような記事を書くことはできないのですが私はそれでも毎日モビルスーツに関する考察をしたいぐらいにはモビルスーツについて考えるのが好きなのです。ということで以前書いたモビルスーツ考察記事をちょっと貼っておこうかと思います。
駄作MS Mk.Ⅱa「EMS-04A 試作ヅダ」
駄作MS Mk.Ⅱb「EMS-04B ヅダ先行量産試作型」
この記事はモビルスーツ「ヅダ」の開発経緯とそれについて妄想した記事になっています。まあかなり長い記事になっていますがこんな感じで今回はグフカスタムについても考察していくことができたらいいなと考えています。
■グフ・カスタムとは
<グフカスタム>
そもそもグフカスタムとは、ジオンが運用するモビルスーツの一つでした。このモビルスーツはジオンのエースであるノリス大佐が搭乗し、物語終盤にたった1機で連邦軍モビルスーツ複数を相手に大活躍、終盤最大の見せ場を作った機体です。その伝え聞く姿は最高にかっこよく、ノリス大佐の伝説とともに語られ一年戦争屈指の名シーンとして戦後も語られ続けています。この伝説的な戦闘からグフカスタムは神格化され、われわれ兵器オタクもあの活躍に最高に興奮し、学生時代はグフ・カスタムのカッコよさだけを語り続けて大人になってきたのです。
しかし大人になった今、冷静に考えるとグフ・カスタムって何だったんだ?という気持ちになるのです。そもそも東南アジアなどという辺境の戦線において、そんなところにこんな高性能モビルスーツがなぜ転がっていたのでしょうか。そしてグフ・カスタムはノリス大佐専用機のように描かれていますが、東南アジア戦線というのはそもそも地球上においてはあまり重要な戦線ではありません。そんなところのパイロットにわざわざ専用機を配備するなんてことがあるだろうか、我々の疑問は常にそこからスタートするのです。ジオン軍が戦争末期に書類を大量に破棄したことによる情報不足がこのグフ・カスタムの神格化につながってしまっているという現状を我々は打破せねばならないのです。
今日私は答えを出さねばならないのだと考えています。そしてその答えを私は見つけたのです。そしてそれはすべてジオン敗北の原因にもつながっていくのです。そしてその疑問について考えるためには、まずグフというモビルスーツについて考えねばなりません。そう、すべてはそこから始まっているのです。
■グフ開発の経緯
そもそもジオンは宇宙に存在するコロニー国家のひとつであり、彼らは地球連邦政府に抑圧され独立するために戦争を開始しました。そして新兵器であるモビルスーツ「ザク」の大量運用による緒戦の大勝利、そこからのコロニー落としの失敗などもあり結局地上に降下して地球連邦政府を屈服させなければいけないという状況に追い込まれました。そして地球降下作戦の結果は華々しいものであり、地球上の鉱物資源拠点であるオデッサ、穀倉地帯である北アメリカなどを次々に制圧、ジオンの快進撃がスタートしたかにおもわれました。
しかし実際には違います。地球連邦政府と比較して国力が1/30、人口1億余りという非常に弱小国家であるジオンは地球への降下をきっかけに戦線を拡大していかねばならなくなったのです。そしてなれない重力下での戦闘はモビルスーツの優位性を失わせ、攻勢が厳しい状況となってきたのであります。ここに至りジオン軍は地上戦特化型モビルスーツを開発しなければいけないという状況に追い込まれました。それまで宇宙戦用に作られていたザクを完全地上戦用に特化させた機体、それがザクJ型、通称陸戦型ザクです。
<ザクJ型>
しかしこのザクJ型はあくまで地上戦用に改修されたザクでしかなく、本命の地上戦用モビルスーツが必要という意見はジオン軍内部に強く存在しました。折から連邦軍におけるモビルスーツ開発の噂は存在しており、時期に連邦軍がモビルスーツを戦場に投入してくるのは明らかな事実となっていたのです。しかしザクは連邦宇宙艦隊を撃破するために開発された兵器であり、対MS戦闘能力は決して高くありません。陸上での運用に特化しており、かつ対MS戦闘を視野に入れたモビルスーツを開発することがジオン軍にとっては急務となっていたのです。そしてザクを開発したジオニック社にはJ型の開発により地上戦用モビルスーツの開発ノウハウが蓄積されていました。ジオン軍の現状を救う地上戦用モビルスーツを短期間で戦力化するためにはジオニック社に開発を依頼するしか選択肢はなかったのです。
<グフ>
そしてその結果開発されたのがMS-07、グフB型でした。世間ではグフ不要論などが騒がれており、ジオン軍にはさもグフが必要なかったかのような言説がまことしやかにささやかれていますがあのような意見は大局的な視点を欠いたただモビルスーツのカタログスペックで語っているだけの意見だと私は考えています。その理由について今から述べていきますのでグフ開発の経緯に思いをはせジオニック社のエンジニアの気持ちになっていただきたいのです。
そもそもジオン軍上層部から提示された条件は地上戦用局地戦モビルスーツであり、その性能はザクを上回り短期に戦力化が可能で生産性に優れ対MS戦闘能力を確保することが条件となっていたはずです。しかしジオニック社にとって今までモビルスーツ同士が戦ったことがないという事実は対MS戦闘能力を確保せよという条件を難解にしました。どのような装備を開発すればモビルスーツに対して有効なのかジオンにはわからないのです。しかし連邦は違います。連邦は打倒ザクを目標に敵から鹵獲したザクを分解、研究し対MS戦闘に必要なノウハウを手に入れました。結果的に生み出されたのがガンダムという超絶最強モビルスーツであったわけで、連邦上層部は打倒ザクというわかりやすい目標が存在したことが開発を容易にしました。一方でジオン側は対MS戦闘がわからない。だからこそグフの開発においてその武装をどうするのかという問題は常に付きまといました。
その結果生み出されたグフはかなり極端な武装を装備することとなったのです。ザクは汎用人型兵器であるところを意識したことから武器を手にもって戦闘するスタイルが採用されています。一方グフは手持ち武器を基本的に装備していません。グフの左手はただのマニピュレーターではありません。指の一つ一つが銃口となっており、75mm5連装フィンガーバルカンとなっています。ザクにおいて採用された手持ち武器はありとあらゆる武器を装備できる汎用性を得たものの、接近戦においては取り回しの問題が発生します。銃を握り、構え、発射するという動きは特に接近戦において不利になると考えられます。よって武器を指に内蔵することで取り回しの問題を一気に解決し、対MS接近戦に特化した武装として装備したのです。ザクが装備していたマシンガンが口径120mmと大型であったことから考えると75mmフィンガーバルカンは口径が小さく、しかも銃身も短くなりかなり威力が低下しました。しかし対MS戦闘において射撃武器は決して決定打にはなり得ないということをジオニック社開発部門は考えていたと思われます。射撃武器は足止めができる程度の最低限の威力があればよい、最終的には接近して近接武器で仕留めるということを主眼に置いてこのグフは開発されました。その結果射撃武器はこのフィンガーバルカンのみというかなり極端な装備になったのです。
そして対MS戦闘においてグフの主兵装として検討され装備されたものが右腕に装備されているヒートロッドです。これはかなり野心的な装備で、おそらくジオニック社開発部門肝いりの武器であったことは想像に難くないです。これは端的に言えばムチです。ムチがモビルスーツ相手に使えるのか?と疑問の諸兄もいるでしょうが、このムチは非常に強力で、ガンダムの足を破壊する活躍を見せるほどの威力を見せます。さらにこのムチ最大の価値は電撃にあり、ムチから電流を流すことによって敵モビルスーツを行動不能にできるという特徴的な装備です。連邦軍が開発中のモビルスーツの性能がわからないからこそ、電撃で行動不能にして確実に撃破することを目指すというのがジオニック社の考えた対MS戦闘であったのです。そもそも75mmフィンガーバルカンがあまりにも貧弱な射撃武器であったことはかなり不自然で、グフの主兵装はこのヒートロッドにあったのではないかということを思うのです。
さらにモビルスーツを確実に撃破するための装備品として近接用の剣、ヒートサーベルを装備しました。これはザクが装備していたヒートホークの発展形の武器であり、金属製の剣の刃を熱することで斬撃能力を確保した近接武器です。ザクは斧であったのに対しリーチの長い剣とすることで対MS戦闘においてもそのリーチを生かして優位に立てる武器であったと考えられます。
グフはその基本設計をザクから流用しています。大幅に改良し性能を大きく向上させた一方でザクとの互換性を確保したことで開発にかかる期間を短縮、さらにザクJ型の生産設備をそのまま流用してグフが生産できるという生産性の高さを見せました。部品の一部もザクと共用した結果整備性も担保し、コスパのいい機体となったのです。
こうして地上戦特化型対MS戦闘用白兵戦MSの開発に成功し、グフは正式採用され大量生産されることとなりました。ガンダム劇場版においてランバ・ラルの副官クランプはグフのことをザクと呼んでいるように、現場においてもザクとグフはほとんど差のない見た目と設計、そして操縦システムによりザクと一緒に運用することが可能という柔軟性も生み出したと考えられます。よってグフはザクと同じように運用されていたことでしょう。この互換性と生産性を維持しつつその中で最大の性能を目指すということはジオンに最も必要だった要素です。そしてこの後のジオンはとにかく多種類のモビルスーツを開発しまくるガラパゴス化が進んだ結果整備性や互換性も無視した状況となり現場は混乱、ジオンは徐々に敗北へと傾いていくこととなるのです。
ランバ・ラルが操っていたグフはラル専用機だったという話が一般的ですが個人的にはそうは思いません。ランバ・ラルも量産期の一つであるグフに乗り、そしてそのグフでガンダム相手にあれだけの大立ち回りを見せ結果的には撃破されたもののガンダムをかなり追い詰めることに成功しています。何が言いたいか、ジオン軍は専用機なんて作ってないということが僕は言いたいのです。そしてその活躍はランバ・ラルをも神格化させることとなり、そしてグフの青い塗装はランバ・ラルにならったものという言説が今でも当然のように言われています。しかし実際は軍内部で疎まれていたランバ・ラルにわざわざ専用機が用意されたとは私は考えません。所詮量産機の一つを受領したに過ぎないと私は考えます。
■グフの躓き
ここまで書いてきたようにグフというモビルスーツはその設計思想と開発思想は非常に論理的で、地上での戦闘において苦戦していたジオン軍を救うために必要なモビルスーツであったことは確かです。しかしその設計は非常に意欲的なもので、極端な装備品は結果として運用上の問題を生み出してしまったのです。最大の問題はフィンガーバルカンでしょう。指に装備したフィンガーバルカンは確かに主兵装ではないという前提のもと装備された武器ではあったものの、実際に現場で運用するうえではやはり主兵装として使われてしまったということは想像にたやすいでしょう。実際ザクから乗り換えれば射撃用武器がフィンガーバルカンしかないわけで、フィンガーバルカンをメイン武器として使ってしまい威力不足に苦しんだのではないかと。劇中においてもグフがザクマシンガンを装備しているシーンがあります。あれは先行量産型のグフA型という説もありますが確証はありません。個人的にはフィンガーバルカンの威力不足に悩んだ兵士がグフB形にザクマシンガンを無理やり持たせて射撃武器の威力不足を補おうとしたという説を考えています。さらに指という繊細な部分に武器を搭載したことは整備性の悪化を招き、さらにマニピュレーターとしての運用にも問題を抱えるようになってしまいました。本来整備性や汎用性を重視していたはずのグフに弱点が生まれてしまったと言えるでしょう。
そして主兵装として考えられたヒートロッドにも大きな問題がありました。ヒートロッドには射出機構がなく、慣性によって射出する装備となっています。よってかなりの手練れでなければその高威力のムチを使いこなすことはできなかった。さらにただのムチであることから確実に直撃させることが難しく、直撃しても固定する装備がないため確実に敵モビルスーツに電撃を与えることは困難でした。結果としてヒートロッドは非常に命中精度が低く、実際には使えない装備との報告が現場から上がってくるようになりました。
射撃武器が弱体でクセのある武器しかないグフは現場からの不満が強く出るようになり、結果一年戦争終結後の現在においてグフ不要論がまことしやかに囁かれているのもこの現場を経験した元ジオン軍兵士たちの言葉によるものが大きいのでしょう。大局的、戦略的に見ればグフは最適解であったにもかかわらずその運用とパイロットの習熟不足により価値が認められなかったといえるのです。しかしジオン軍には兵がなく、習熟訓練に時間を使っている暇はなかったのです。結果的にグフは正当な評価をされることなく今に至ります。
そしてその現場からの不満を改善するために開発されたグフがMS-07B-2、グフB型の改良型となる機体です。この機体は両腕にヒートロッドを装備するという点がかなり野心的な機体で、グフのヒートロッドの命中精度の低さを補うために二本装備するという点が改良点でした。しかしヒートロッドが根本的に抱える命中精度の低さと確実性の低さをカバーするまでには至らず、結果的に大々的に量産されることはなく終わってしまいます。
そしてグフの抱える様々な問題を根本的に解決し最強の陸戦モビルスーツを開発するべくジオニック社はグフの抜本的改良に手を出すこととなります。それがMS-07B-3、のちにグフ・カスタムと呼ばれるようになる機体です。
■そしてグフカスタムへ
グフにおける最大の問題はその近接戦闘に寄せすぎた武器の設計です。近接戦闘に特化しすぎたグフの性能をある程度バランスの取れたものに戻す必要があります。しかしその一方で戦局は徐々に逼迫しており、あまり余裕はありません。その状況でグフを改良しなければならない。そんな状況でグフ・カスタムなどというエース専用の少数生産の機体を作る余裕があったのか。答えは否であります。グフカスタムを開発した時の背景をここまで説明してきましたが、本来主力モビルスーツとして運用するべく開発したグフには多々問題を抱えていたことからこれらを改修し改良型を作る必要に迫られたのではないかと考えます。そしてMS-07B-3、通称グフ・カスタムと呼ばれる機体ができることになります。しかし私はこの機体はグフ・カスタムではなく実質的にはグフ後期生産型であったのではないかと思っています。
さてグフからグフ・カスタムに至るまでに何がどうなったのか、それを一つずつ解説していきましょう。まずグフにおける最大の問題点、それは装備品を近接に寄せすぎた結果の中距離における射撃武装の貧弱さです。それを補うためにグフカスタムでは特徴的なシールドと一体型の大型バルカンが装備されています。この6連想75mmバルカンは口径こそグフのフィンガーバルカンと同じものの圧倒的に銃身が長くなったことにより貫通力を向上させることに成功しました。75mmと小口径ながらもジムが装備していたプルバップマシンガンが90mmであの銃身の長さであることを考えると敵モビルスーツの装甲を貫通するのには十分な性能を発揮するものと思われます。加えてフィンガーバルカンよりも操作系が直感的で一般兵でも使いやすいという特徴があり、これによりグフ最大の弱点を補うことに成功したのです。さらにバルカンであることから弾幕展開能力もフィンガーバルカンと同様に確保されたのです。一方でフィンガーバルカンから大幅に設計が変更されたことにより弾薬は別とせざるをえず、ここに補給の問題を抱えるようになってしまったとは言えます。さらにシールド一体型バルカンは取り回しに問題を抱えておりフィンガーバルカンと異なり近接先頭においてはただの手枷となってしまうという問題を抱えることとなったのです。
それを補うため、シールドの下、左腕に外付け式35mmバルカンを3基搭載、実質的にフィンガーバルカンの代用装備としてこれを装備したと考えられます。35mmバルカンは口径が非常に小さく威力の低さという致命的な問題を抱えていますが、そもそもフィンガーバルカン自体が威力の低さを抱えていたことを考えればより口径を小型化したうえでバルカンを多連装とすることにより弾幕展開能力を優先したほうが良いという判断に基づくものであろうと思われます。
そしてグフ・カスタムにおいてはヒートロッドについても改良が施されるにいたるのです。ただのムチであったヒートロッドはワイヤー式に変更となり、射出システムの搭載によりその低い命中精度を向上させる改良が施されたのであります。さらにヒートロッドの先に吸着機構をつけたことにより命中すればほぼ確実に電撃を与えられるという確実性も確保し、グフ最大の特徴であるヒートロッドが使える装備となったのです。
これらの装備増加による重量増もグフ飛行試験型からのパーツ流用による軽量化と機体各部の合理化により重量をグフと同等に保つことにも成功、ジェネレーターやスラスターなどを交換する余裕はなくグフから流用せざるを得ないという状況で最大限の努力により性能を維持したのです。
しかし戦局の逼迫から地上戦用モビルスーツの需要は失われ、地上戦用モビルスーツの量産優先度は大きく下げられてしまったのです。グフ・カスタムも結局大量生産されることなく少数生産に終わり、地球各地でエースパイロットたちに配備されるのみに終わったのです。そして戦後ジオンの資料が失われたことによりグフ・カスタムはエース専用機であったかのような認識を受けてしまい、「グフ・カスタム」などという本来と異なる名称で呼ばれてしまう結果を生み出してしまったと考えています。
■グフ・カスタム神話
ではなぜグフ・カスタムに神話が生まれてしまったのか。それを我々は考えねばなりません。幸いなことに我々は一年戦争における東アジア戦線の情報に関しては多くの情報が公開されており当時の状況をよく知ることができます。まずジオン軍ノリス大佐の状況としては連邦軍MS08小隊のモビルスーツ3機、そしてガンタンク3機を同時に相手にするという不利な状況です。そして戦後に公開された映像ではノリス大佐はグフ・カスタムの圧倒的な機動性をもってして連邦軍を翻弄、結局ノリス大佐は撃破されるもののガンタンク3機を撃破し08小隊の指揮官機を小破させる活躍を見せたのです。この映像作品から我々はノリス大佐とグフ・カスタムが優秀だったがゆえに連邦軍は撃破され敗北したという印象を我々に抱かせます。しかし考えねばならないことは連邦軍の事情です。戦後残っている映像や資料は基本的に連邦側から公開された情報であるという事実は見逃すわけにはいかないのです。
連邦軍08小隊の小隊長シロー・アマダは戦後40年がたった現在、敵兵士と接触しスパイ疑惑に問われ軍法会議を受けていたことが明らかになっています。一方で重大な軍規違反があったにもかかわらず結局適切な処分がされることなくノリス大佐との戦闘においても指揮官として前線に立ち続けています。戦後連邦軍はシロー・アマダ本人が行方不明となったことを利用しこのような事実を隠蔽し続けたということは事実です。
敵へのスパイ疑惑があったような兵士をそのまま隊長として使い続け、結果として敵モビルアーマーの完成を許し連邦軍に大損害を与え戦後の東アジア復興に多大なる損害を与えてしまった、そのような事実を連邦軍としては認めるわけにはいかないのです。であるからこそ、戦後に作られた映像において話の大筋は敵エースパイロットたるノリス大佐の活躍が中心に描かれているのです。敵にエースパイロットと強力なモビルスーツが存在した、だから敗北したのであるという印象操作に成功したのです。連邦の失態を見事に隠すことに成功した。
このようなことは戦争においてはよくおこなわれることであります。戦艦ビスマルクとフッドが殴り合って敗北した際にも必要以上にビスマルクの脅威を叫び、イギリス海軍がその自軍の失敗と失態を隠蔽するため敵の強さをとにかく誇張したことで隠蔽することに成功した。
グフ・カスタムとその神話は戦後処理において作られたものであり、決して事実と異なるものであろうという結論に私は今回至ったのであります。しかしその神話は美しく、そして戦争オタクを魅了するものであります。だから私はそのような結論に至ってもなお、グフ・カスタムとノリス・パッカードの神話を信じ続けたいと思っています。真実は必ずしも美しいとは限らないのです。
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